ささやかな奈落のはじまり④
(二)
……夏の日差しがギラギラ照り付けている。
私は、なぜか叢の中にいた。
夏の叢は太陽の照り返しと、草が放つ水蒸気で非常に蒸し暑い。
遠くに男達の声が聞こえている。
私を探しているのだと思った。
頭を出して声の方向を窺う。あのハゲ頭の田中の姿が見えた。相手もこちらを認めた様だ。
だめだ、だめだ、こちらに向かって駆けて来る。
捕まる! 早く逃げなくては!
怖くなって、私は走り出した。
息せき切って駆ける。追っ手がどんどん迫って来るのがわかる。田中のハァハァいう声が間近に聞こえる様だ。
私は駆ける。駆け続ける。
どれだけ引き離したろうと後ろを振り向いた瞬間、草に足を取られて私は叢の中に投げ出された。
青草の草いきれの濃い臭い。
精液の臭いだ。
私はその中にじっと身を潜める。
背の高い夏草が身体を隠しているので、男達には見えないはずだ。
直ぐそばで声がする。
「どこへ行ってしまったんやろ」
「あの、アマ、ただじゃおかねーぞ」
粗野な男の声だ。
私はうずくまり、息を殺して震えていた。
ドタドタと男達の足音。
見つかる! 息を止める。
でも、意外にも足音は遠ざかっていった。そして、ほとんど聞こえなくなる。
大丈夫かしら?
身体を起こし、頭を少し草から出して周囲の様子を窺った。遠くの方に田中達の背中が見えた。
もう少しの辛抱だ。あの男達が行ってしまうまで、ここに隠れていよう。
私は土の上にしゃがみ込んでひと息ついた。
そのとき!
後ろの叢がザザッという音を立てて揺れた。私は音の方を見た。
何かいる!
気配が次第に強くなってきた。何かがこちらに近づいてくる。
草が揺れ、それは姿を見せた。
蛇だ!
大きな蛇。黒光りしている。鎌首を擡げ、ちろちろと赤い舌を出しながら近づいて来る。
私は身体を固くした。
声は出せない。ここで声を出すと見つかってしまう。
そっと後ずさりしたが、蛇の方が速かった。
「あっ!」
思わず叫んでしまった声の大きさに気づいて、あわてて手で口を塞いだ。
蛇が太腿に巻きついていた。
強い力でぐいと締め付けてくる。
私を締め付けながら、ゆっくりと移動している。
冷たい、ざらざらした感触。
太腿から上の方へはい上がり、スカートの奥へ進んで来る。
撥ね除けようとするが、既に蛇は足の付け根にまで達していて、パンティの脇から頭を入れようとしていた。
ああ、そこはっ!
蛇の頭が薄衣の中に入り込んで、湿った叢の中で蠢いている。
私は身体をこわばらせる。ざらつく様な触感に身体中が総毛立つ。
「ああーッ」
思わず声が出た。
蛇は叢の奥の柔らかな肉襞に沿って、ゆっくりゆっくりと焦らす様に進んでいる。
私の敏感な処に触れた。
私は蛇が巣を探しているのだと思った。そして、それがどういうことか思い出して、かあーっと熱くなった。
「……そんな……そんなっ!」
じっとりと湿った秘部の上を、それは時間を掛けて進んでいる。
思ったとおり、柔らかな襞をかき分け、頭を突き入れ、肉をぐいぐいと押し開いて、奥へ奥へとゆっくりとしたペースで進む。奥深くへ潜りこもうと進み続ける……。
「あああっ!」
蛇が私を貫いている!
私の身体の中でピクピク蠕いている!
その蠢きがとても心地よい。
私はその甘美な蠢動を受け入れ、リズムに合わせて腰をくねらせる。
暑い、暑い。
汗で湿ったワンピースをたくし上げる。
乳房に手が伸びる。
服や下着をはだけて、夏草の中で乳房を揉み扱き喘いでいる。
股間からはみ出た蛇の一部が、じゅくじゅくになった私を執拗に愛撫している。
夏の青空が見えている。雲が動いているのが見えている。
そして、その視界の端っこで、
男達が嫌らしく笑っている……。