エロスの涙が滴る②

「きついか?」

竜造が訊いた。答えないでいると、

「これはどうだ?」

腕がぐっと高い位置に持ち上げられ、関節がギシッと音をたてた。

「ああっ、キツイ!」

玲子は顔を顰めた。

「よし、このくらいにしておいてやろう」

腕が背中に押さえつけられ。左腕から乳房のすぐ上を縄が通る。縄は右腕を過ぎて背中に移り、また右側から現れて、すでに巻かれている縄のすぐ上を通って行く。

背中で竜造の手が動いている。キビキビとした動作だった。キューッと縄が擦れる音が聞こえ、小刻みな振動が玲子の身体に伝わってくる。

縄が再び畳の上に飛んで、今度は乳房の下が縛られた。二重に縄を掛けられたあと、脇の下から前に縄頭が現れて閂が作られた。すると少しは自由があった腕の動きがまったく封じられてしまう。三本目の縄で、乳房が縊り出された。

竜造が縄と皮膚の間に指を入れる。締まり具合を確かめているのだと分かった。

腕を背中で固定するだけで、身体の自由が完全に奪われてしまうことに玲子は驚いた。

手首が高い位置にあるため、肩関節への負担が大きい。肩が痛くなって、腕をわずかに下げようとすると、今度は胸が締め付けられた。

「もがけばもがくほど縄が締まるぞ」

竜造が笑った。

 

「庭に向かって歩け」

玲子は部屋の縁までよろよろ歩いた。敷居の上に立つと、もう一本縄を取り出されて背中の縄を縛り、縄先が投げ上げられて鴨居の上を通る。

「爪先立ちになれ」

無理矢理腕が引き上げられた。こうなると、否が応でも爪先で立つしかない。すぐ縄が引かれて、その姿勢のままで固定された。頭の上で、竜造が余った縄を手際よく吊り縄に巻き付ける。

竜造は縄をさらに二本取り出して、左の太股と足首を縛った。それらの縄を鴨居に通す。あっという間に左足が高く吊り上げられてしまった。

【片足吊り】 黒鬼の手帖から

「吊り責め」は拷問の一つとして古くから用いられてきた釣責が起源である。被験者は縛られて空中に吊りあげられる。無防備な状況にして責める事で、肉体ばかりでなく精神的にも大きな苦痛を与えることができる。

全体重が身体の一部に掛かると、神経や骨、内臓に損傷を与える場合があるため、吊り責めは過酷で危険な責めに分類される。血管や神経が浅い位置にある関節部分への圧迫を極力避ける。

「片足吊り」は部分吊りの一種であり、「後手高手小手」などと組み合わせて行うとよい。地面に着いている方の足が浮けば完全吊りに移行できる。

まず高手小手に縛り、背面の縄を取りまとめた部分に吊り縄をしっかりと結ぶ。このとき荷重が胸縄等の各部に均等に分散する様にする。被験者の身体に合わせて吊り縄の長さを調整して、爪先立ちとなるギリギリのところで吊りあげると効果的である。

足縄は太股の部分に三重に巻き、巻いた部分に縄先を通して縛る。輪を残しておいて、梁等を通したあとの縄尻をこの輪の中を通すと吊りが容易になる。

必要な高さまで足を持ち上げ、縄を巻き付けて固定する。吊り足の位置は前方、側方、後方ともに可能であるが、側方が局部の露出を大きくできること、また与える苦痛が大きいことから好ましい。なお、後方はエビ吊りに至る中間段階としても使える。

腿の吊縄を、身体を吊る縄の近くに置いて三角形を作ると、足の角度が大きくとれて効果的である。腿と身体のそれぞれの吊り縄に補助縄を掛けて、二本一緒にまとめると、大開脚と吊りの安定が同時に可能になる。

被験者の身体の柔らかさに応じて、吊る高さを変える必要がある。足首も同時に吊って、膝を伸ばし股から爪先までを一直線にする姿勢を取らせることも可能であり大きな苦痛を与える事ができる。高い位置に足先を持ち上げるほど、被験者の苦痛はより激しいものとなる。

  • 筆者
    office-labyrinth
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