恥ずかしい夜⑦
(三)
部屋まで一人で来いってどういうこと? どうして一人で帰ってしまうの……
あまりにも酷いと私は思った。
どうしよう? ともかくコートを羽織ろう。そして……
そして……
啓太の部屋へ行こう。それしかない。
私はレストランのキャッシャーのところまで行き、黒服の男に「コートをお願いします」といった。
男は係りの女と何か話している。
女が首を横に振っている。
男は頭を下げて、「お連れ様にお渡ししたようです」と申し訳なさそうに答えた。
そ、そんなぁあ!
身体から血が引いていく。
こんな格好なのに。どうしたらいいの! こんな恥ずかしい格好で、ホテルの中に放り出された。こんな惨めな恰好で部屋まで行かなければならない。
小走りにエレベータまで進んだ。ボタンを何度も押す。
ドアが開いて、家族客と鉢合わせした。小さな男の子が私を指差して、
「あのお姉ちゃん、オッパイ丸見えだよ」と叫んだ。親は慌てて、子供の手を引いて脇をすり抜けていった。
ともかくエレベータの中に入る。
階のボタンを押そうとして、私は気づいた。
部屋はどこだろう? 啓太の部屋は何番だったか? 教えてもらっていない!
フロントで訊ねるか? こんな恰好で!
私は、パニックになろうとしていた。なんとか、私は自分に声を掛けた。
落ち着くの、落ち着くのよ! 深呼吸をしよう。いち、にい、さん……
どこかで見た覚えがある気がした。確かに、見た。
そうだ!
私はポーチを開けてドレスとともに送られてきた啓太からの手紙を開いた。
十七階の一七〇四号室と書かれていた。
やった! ちゃんとあるじゃない。私は安堵のため息をついた。
十七階に行けばいいんだ。それで啓太の部屋に入れる。
私は十七階のボタンを押す。エレベータが動き出した。
ドアが開いた。十七階に着いたのだ。廊下を歩いて最初の部屋の番号を見た。三七〇一?
おかしい……なぜ、三七なんだろう?
隣の部屋も見る。三七〇二。
つぎの部屋、そのつぎの部屋。私はすべての部屋の番号を調べた。みんな三七から始まっていた。
このビルの十七階には一七〇四号室はない。
私は途方にくれてしまった。
先ほど待ち合わせた本館の方だろうか?
行ってみよう。それには、まず、六階のロビー階まで下りなければならない、
再びエレベータのところに急いだ。
前から若いカップルが廊下を歩いてきた。男は私を興味津々で舐め回すように見つめている。女が怒って、男の胸を叩いた。その横を私は走り抜けた。
エレベータ前に到着。幸い、すぐにエレベータがやってきた。大急ぎで中に入り、六階のボタンを押す。
六階に着いてドアが開いた。展望レストランへ向かう客が大勢エレベータの前で待っていた。皆、私の姿を見て息を飲む。その間を抜けて、私は本館への通路を走った。
エレベータに駆け込み、十七階を押す。
エレベータは多くの客でいっぱいだった。男の腕が身体に伸びてきてもおかしくない距離である。
十七階のドアが開いた。
賑やかだ。ここもレストラン階のようだ。客室がある雰囲気ではなかった。
エレベータの前で私は困り果てていた。
一体、啓太の部屋はどこなんだろう?
少なくともこの建物ではないことは確かだ。なぜなら、十七階は最上階だからだ。
やはりアネックスだろう。私は引き返す事に決めた。