エロスの涙が滴る④
黒鬼の手帖から 【催淫責め】
「催淫責め」は、被験者に媚薬・催淫剤を内服する、あるいは皮膚や粘膜に塗布して、強制的に性欲が異常に昂進し、極度に性感が増大した状態に至らしめ、その一方、緊縛などによって身体の自由を奪い、この高められた性欲を解消する道を閉ざした上で、「言葉嬲り」などにより時間をかけて被験者を精神的・肉体的に追い込んでいく責めである。
用いる媚薬・催淫剤には様々な種類があるが、用法を間違うと発狂したり、死に至ることもあるので、十分注意を払う必要がある。また市販の媚薬・催淫剤には成分が不明なものが多いので、あやしいものは避け、成分がはっきりしているか、効果・安全性が確認されているものを用いるべきであろう。種類別に列挙すると、
○中枢神経に作用して、催淫、性感向上などの作用をもたらすもの(この中には肉体や精神の緊張を解き、欲望を解放する作用のあるものを含む):ヨヒンベ(西アフリカ原産の常緑樹。その樹皮にはヨヒンビンが含まれる。脱力して陶酔状態となり、時には幻覚症状を伴う。また血流を増大させ性器を充血)、ベラドンナ(チョウセンアサガオなどに含まれるアルカロイドで毒性が強いが少量だと鎮静剤・幻覚剤として作用する)フェロモン、竜涎香、麝香
○A10神経に働きかけ快感を生み出す麻薬類:モルヒネ、大麻、コカイン、LSD
○皮膚・粘膜に作用して、猛烈な痒みを与えるもの:丁字油、山椒、山芋・ずいき(針状の蓚酸カルシウムによる痛痒)、紫稍花(淡水海綿の微細骨)
○利尿作用を持つもの:利尿薬(サイアザイド系、ループ型、カリウム保持型がある)、防已黄耆湯エキスなど
「下の口から涎が溢れているぞ。すぐに糸を引いて垂れ下がりそうだな」
「旦那様、すぐにドクドクと淫汁を吐き出す様になります」
「ほほう、何をしたのだ?」
「例の塗り薬を使ってみたのです。値段が高いだけのことはあるようです」
「なるほど、確かによく効いておるわ」
「痛痒成分に加えて、少量の阿片とベランドンナが配合されております。これらの成分がゆっくりと皮膚から吸収されて……」
「えも言われぬ心地になって、のたうち回るというわけか」
「はい。まだ効き始めというところでしょうか。この薬は効き始めるのに時間がかかりますが、その分、持続性も高いのです。長時間喘ぎ続けたあげく、狂ってしまう女もいるほどです」
「狂ってしまうか――せっかくの女が初日から狂っていては話にならんが……」
「ですからそうならないように、別な刺激を与えてやるのです。正気を保つためにも激しく責めるのがいいでしょう」
「薬で狂わせておいて、それを正気に戻すためにたっぷりと苛め続けるというのか。ひどい奴だな。だが、面白い趣向には違いない――十分に楽しませてもらおうか」