めくるめく出会いの風景②
(二)
――あのころ、私は印刷会社の事務員として働いていた。啓太と出会ったのは、つきあっていた男と別れて三月ほどたったときだった。
その男は会社によく出入りしていた業者だった。何回か会話を交わすうちに食事に誘われた。とはいっても、行くのはいつも薄汚れた居酒屋ばかりだった。
でも楽しかった。
これまで男の人とこの様に話す事はほとんど無かったからだ。
私は東京の街に余り馴染めなかった。これまでの生い立ちや田舎出であることにコンプレックスを感じていたのだと思う。
どう見られているかいつも気になり、自分がいかにも田舎臭く、東京には似つかわしくないと思っていた。
それに東京の男はみんな口ばっかりで何を考えているかわからず、危険だとも思っていたのだ。
だから、同じくらいの年齢の男性に対して、いつも一歩引いて接していた。そのせいか私を誘う男もこれまでほとんどいなかった。
そんな中で彼、「花岡俊介」との会話はとても新鮮で楽しかったのだ。
俊介は私より歳が一つ上だった。
ある日、彼はいつもの様に会社にやって来て、「土曜日、遊びに行かないか」と私を誘った。
私はその誘いにのり、おめかしをして出かけた。それに対して、俊介はジーパンにTシャツといういで立ちだった。
二人で映画を見て、その後、ホテルに誘われた。
顔から火が出るほど恥ずかしかった。でも、結局、彼についていった。ホテルは汚く、とても気持ちがいい処とはいえなかった。
男女の愛欲の臭いが染み込んだ湿ったベッドの上で私は俊介に抱かれた。
俊介は一方的に私の身体を求め、まだ潤ってもいない私の中に彼のモノを無理矢理にねじ込もうとした。
「痛い!」
悲鳴をあげると、私の身体の中にべっとり唾を塗りたくり、四苦八苦しながら、ようやく結合に成功した。
それだけで満足したのか、彼はあっという間に果ててしまった。
彼との最初のセックスはそんな具合で、いとも簡単に終了した。
それからも俊介は会社に来る度に私をホテルに誘った。いつも一方的なセックスだった。
俊介はいつも、「もっと違った仕事をして大きくなるんだ」といっていた。
私はそんな俊介が頼もしく思え、一方では危なかしげにも見え、「無理しないでね、今のままで十分だから」と話していたのだった。
そして突然、俊介は貿易関係の会社に仕事を代わることになった。
「給料がだいぶ違うぞ、あんなケチな会社、辞めてよかった」と俊介は私の身体を弄りながらいった。
私はそんな俊介を心から祝福した。しかし、その頃から彼の態度が変わりだした。
デートの回数が減り、たまに会っても心ここに在らずという感じだった。でも、会えば身体を求めてくる事は相変わらずだった。
そして突然、俊介は「別れよう」と切り出した。
「どうして?……私を嫌いになったの?」
と私は聞いた。
そのときの俊介の答えがふるっていた。
「お前は俺に似つかわしくないんだ。別れた方がいい」というのだ。それを、俊介はいかにも口の中の汚い物を吐き棄てる様な調子でいったのだ。
私は棄てられてしまった。
私はそれからしばらくの間、泣き明かして過ごした。
あとで、俊介が務めている貿易会社の重役の娘と付き合っているという噂を聞いた。