恥ずかしい夜①
(一)
クラウンホテルは千代田区紀尾井町にある老舗ホテルだ。
一九六四年の最初の東京オリンピックに際して収容力を増加させるために、国の要請で建てられたとかで、その後、当時の建物の他にさらに二つのタワーが増設された。
最近は外国資本の最高級ホテルが進出しているので、それらとは一線を画すべく「和」のステータスを強調した作りとなっているとのことだ。
麹町側にメイン、赤坂見附側にアネックスの二つのエントランスがあるが、私は地下鉄の都合で赤坂見附側からホテルに入ることにした。
地下鉄の出口から地下通路を抜けて地上に上がると、弁慶橋のたもとに出る。そして、橋を渡れば、もうホテルは目と鼻の先だ。
啓太から送られてきた衣類は全て身につけきた。黒いレースのパンティ、黒のストッキングとガータベルト、ワイン色の肌を大きく露出させたミニドレスを着て、そして紅いハイヒールを履き、首には黒色のチョーカーをつけている。
寒い三月であったのが幸いだった。上にベージュのコートを羽織っても変に見えない。娼婦の様な服装はコートで隠せたし、妖艶なチョーカーも首元に巻いたスカーフで隠せた。どう見ても普通の恰好だ。十五センチの赤いヒールを除いては。これだけはさすがに目立っているだろう、と思った。
この服を着ることを悩みに悩んだ。そして、着ると決めてしまったからも、解決すべきいろいろな問題があった。
第一に多過ぎて下着からはみ出してしまう陰毛であるが、これは昨夜、手入れした。
まず、ハサミで下腹部を覆う毛全体をカットしていった。長すぎる毛を短く整えるとやや落ち着いて見えたが、生えている面積が広いので端部をもっときれいに剃り上げる必要があった。
これには美容コーナーで購入したVIOライン用のシェーバーが役に立った。要するにデリケートゾーン専用のシェーバーである。カミソリで剃るより肌を傷めないと店員がいっていた。
これでV字型に生えている毛を端から剃っていき、小さなO字型に揃えた。
問題は肛門の周囲だった。ここにも多くの毛が密集していたが、見えないので悪戦苦闘した。
毛は肛門の外から内に向けて生えているので、その流れとは逆に内から外側にシェーバーを動かした。
一時間くらい作業した結果、陰毛はレースのパンティに綺麗に収まった。剃り残しがないか指で触ってみたが、特に問題はない。
第二の問題はドレスから透けて見える乳首だった。布地が薄く地肌が見えてしまうので、その部分を何かでブロックする必要がある。ブラジャーがいいのだが、背中が大きく抉られているのでそれもかなわない。
下着ショップで相談すると、乳房の部分だけを押さえるブラジャーがあったので、一番面積の小さなものを購入した。それでも大きいので、これをドレスに合わせて切り取って使ってみると、うまい具合に隠せた。これなら大丈夫と私は一安心したのだ。
スカートからはみ出るストッキングのレーストップとガータベルトはどうしようも無かったが、これはコートで隠せる。どうせホテルに着いたら、啓太は私をすぐに部屋に誘うだろう。だからコートの下はどんな格好でも大丈夫だと高をくくった。そして、ひとまず納得して今日を迎えたのだ。