(十五)明治二〇年代の小説を読む
前回、明治以降の作家の検索数トップ二十を披露した。「次回からは、カテゴリー・分野別にどのような作家が読み継がれるのかについて考察してみよう」としたのだが、ずいぶん時間が開いてしまった。明治の文壇の流れを把握する作業を行いながら、いろいろな作家の小説に目を通していたのである。
明治は一八六八年から一九一二年まで四四年間続いている。いくつかの時期に分かれているので、十年単位で調べてみることにする。明治二〇年代から始めよう。というのは、坪内逍遥が「小説神髄」を表したのが明治十八年であるが、それ以前は江戸時代の文芸が続いていて、「戯作」が中心であり、とても近代小説とは言えないからである。一八八七(明治二〇年)に発表された二葉亭四迷の「浮雲」を持って近代小説の開始とするのである。
さて、明治二〇年代に発表された小説には次の様なものがある。
明治二〇年「浮雲」 二葉亭四迷
「武蔵野」 山田美妙
明治二二年「二人比丘尼色懺悔」 尾崎紅葉
「胡蝶」「いちご姫」 山田美妙
「風流仏」 幸田露伴
明治二三年「舞姫」 森鴎外
明治二四年「五重塔」 幸田露伴
「油地獄」「かくれんぼ」 斎藤緑雨
明治二五年「即興詩人」 森鴎外
「三人妻」 尾崎紅葉
明治二七年「義血侠血」 泉鏡花
明治二八年「にごりえ」「たけくらべ」 樋口一葉
「大さかずき」「書記官」 川上眉山
「夜行巡査」「外科室」 泉鏡花
「変目伝」「黒蜥蜴」 広津柳浪
「蝗うり」 前田曙山
「乳母」 北田薄氷
「女房殺し」 江見水蔭
明治二九年「多情多恨」 尾崎紅葉
「断流」 田山花袋
「藪こうじ」 徳田秋声
「寝白粉」 小栗風葉
「今戸心中」 広津柳浪
「龍潭譚」「照葉狂言」 泉鏡花
作家別の検索件数は次のとおりだ。七位の徳田秋声くらいまではまだ知っているが、八位以下は忘れ去られている。
一位 森鴎外 三三一〇〇
二位 樋口一葉 二七一〇〇
三位 泉鏡花 二二二〇〇
四位 二葉亭四迷 六六〇〇
四位 田山花袋 六六〇〇
六位 尾崎紅葉 五四〇〇
六位 幸田露伴 五四〇〇
七位 徳田秋声 二四〇〇
八位 広津柳浪 一〇〇〇
九位 山田美妙 五九〇
十位 川上眉山 二一〇
十一位 小栗風葉 二一〇
十二位 江見水蔭 一四〇
十三位 北田薄氷 三〇
十四位 前田曙山 二〇
では、次回から、これらの作家の主な作品を研究しながら、読み継がれる作家・忘れ去られた作家について考察してみたい。