私のやさしい調教師①
(一)
竜造は眼の前の獲物を舐め回すように見つめていた。
岩室玲子――そういう名前だった。さっき、奴隷契約書の署名を見たのだ。
男の借金のかたとしてここにやって来た。
いい女だ。
すこぶる美人というわけではないが、卵型の顔に怯えた切れ長の目。恐怖におののき震えるやや厚みのある紅い唇など、嗜虐感をそそる顔だと思う。
身体も均整が取れていて、ちょっと日本人離れしている。くびれた腰に発達した尻。すらりとした長い脚。巨乳とまではいかないが、格好の良い乳房だ。乳雷がやや大きい。感じ始めるとこれがぷっくりと膨れて、乳首がツンと上を向くだろうと竜造は思った。
全体に太りすぎず、痩せすぎず。縄が映える身体だ。
痩せた女に縄は似合わない。また、肉がつきすぎて縛るとボンレスハムのようになるのは論外である。
そして、艶めかしく輝く白い肌。
弾力性が高そうだから、縛ったときに縄と縄の間に肉が崩れることなく、きれいに盛り上がるだろう。
いい素材だ。
責めに対する反応もよさそうである。
竜造は駆け出しの調教師ではない。これまでの経験で、ちょっとした動作から女の感度が読み取れるのだ。
肌に手が触れたときに見せたビクッとしたおののきや喘ぎから察すると、相当、敏感な身体なのは間違いない。
やりがいがある。
もうすでに調教の手順は出来ている。状況に応じて、多少、責めの順番が変わるかもしれないが、一週間で、確実に淫乱な牝奴隷となるだろう。
何回もやっている作業であるから間違いない。これまでの二十年間、毎日女を縛り、責め上げ、性奴隷に作り替えてきたのだ。
初めの頃は見様見真似だった。
女を縛るにしても、強く縛れば良いと思っていた。だが、女は痛がるばかりで、一向に調教の効果があがらない。
竜造は悩み、夜も眠れなくなった。
その頃である。親しくしていた老調教師から、「俺はもう引退するからこれをやる。勉強して、自分なりの技を考えろ」と一冊のノートを手渡されたのだ。
表紙には「黒鬼の手帖」と太く書かれていた。
中を開けると細かな字で様々な調教方法について丁寧な解説がほどこされている。
竜造はそのノートを貪るように読んだ。そして、そこに書かれてあることを実践した。それで竜造の腕は急速に上達していった。
竜造はいつもこのノートを見ながら、調教のプランを作ることにしている。さらに、それに工夫や実験を加えて、その結果をノートに追記する。そうすることで技が磨かれ、さらに起こり得る様々な変化に対応できる様になったのである。