第五話 武者紫②

2020年03月29日

「きれいだ……やはり、思った通りだ。紫がよく映える」
あの人は、私を立たせて、背中に結んだ縄を鴨居にかけて引っ張り、私を吊り上げ気味で固定してから、少し離れた位置に立って、仕事の出来映えを眺めていた。そして、もう一本、紫色の縄を手に持って、こちらに近づいてくる。
「つぎは下の方を縛ってあげようね。おや……あそこが光っているよ……太もものところまで、ねっとりとしたものが垂れ下がっている」
上半身に食い込む縄の作用で、私はもう夢見心地になっていて、私の秘芯はすっかり濡れてしまっていた。
「こんなになって……玲子はいやらしい女だ」
あの人はそういいながら、クレパスにそって指を動かし、溢れる蜜壷の中に指の先端を入れた。
「うううっ……」
私は思わず、甘い呻きをもらしてしまった。
「そんなに縄がいい気持ちか……それなら……」
あの人は、紫色の縄を私の腰の縊れに巻つけて、へその下で結ぶと、こぶを二つ作って、ゆっくりと縄を股間に下ろしていった。
「もっと、いい気持ちにしてあげようね……」
あの人は、こぶの部分が、蜜に溢れた秘芯に当たるように、そして二つ目のこぶを、その下でおののいている菊のつぼみの中に埋め込むようにして、縄を股間に通すと、後ろの腰縄をくぐらせて折り返し、二つのこぶを上から押さえつけるようにして縛りあげた。
「その縄に、玲子の体液をたっぷり吸わせるといいさ……」
そんな事をいわれて、私は少し反発したが、結局、消え入りそうな声で、
「……はい」
ということしかできなかった。

「足も縛るね……」
あの人は、私の太腿、ふくらはぎに縄を器用に巻きつけて、最後に足首を縛った。脚全体が完全に固定されていた。その状態で、あの人は鴨居にかけた縄を引いて、私を爪先立ちにしてから、不自然な姿勢で吊り縄を固定した。
「じゃあ、しばらくこのままだ。どうだい、苦しいか?」
「ええ……」
「そうか、でもじきに慣れてくる」
「はい……」
あの人は私の顔を優しくなでながら、微笑んだ。
「僕はしばらく外出してくる。その間、玲子はここでお留守番だ。ゆっくりと縄の感触を愉しんでいたらいい……」
私は驚いて、顔を上げた。あの人は陽の光の中にいて、顔の部分が陰になって、表情が読めない。
「私をおいて……何処へ行かれるのですか」
「ちょっと、用事を済ませてくるだけだ。そんなに時間はかからない。早く帰ってくる……」
あの人は、私を全裸で座敷の鴨居に吊ったまま、外出の用意を始めた。
「障子は開けておくね。明るいし、心地よい風が入ってくる……」
あの人は障子や襖をどんどんと開けていく。
庭のキンメツゲの生け垣の向こうは道路になっている。その生け垣はところどころに孔が開いていた。道路から座敷の中がまる見えかもしれない、と私は思った。
「そうだ……」
あの人は何を思いついたのか、座敷を飛び出していったが、すぐに何か大きなものを提げて戻ってきた。
「玲子がどんな格好なのか、見せてあげようね……」
それは、大きな姿見だった。
「どうだい、綺麗だろう……武者紫が白い身体に映えている。全身から匂い立つような色香が発散されている」
私はその鏡を見た。そこには無残に緊縛された一人の女が映っていた。
「帰ってきたら、その身体をたっぷり可愛いがってあげるね。だから、いい子にして待っているんだよ」

あの人は出かけて行った。庭の向こうの道路を、あの人が歩いていくのが見えた。

私は座敷にひとりぼっち……。

  • 筆者
    office-labyrinth
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