紫色の夢

  • 第五話 武者紫⑱

     私は何が起こっているのか、気づき始めていた。夢の中の「私」は精巧な人形なんかじゃない! 生身の人間なのだ。クスリか何かのせいで筋肉を動かせない。でも、知覚が奪われているわけではない。それは夢を見てい…
  • 第五話 武者紫⑰

    (五)  ぐっしょり汗をかいていた。  乳首が痛い。慌ててその部分を調べた。血が凝固して丸く固まっている。指で剥がすと、なんと小さな穴が開いているではないか。陰部と肛門もヘンだ。触ってみる。もちろん、…
  • 第五話 武者紫⑯

    「ほんとに温かいぜ」  高瀬課長が「私」の乳房を弄っている。里美も「どれどれ」と手を伸ばす。 「ほんと! それに柔らかいわりに張りがあって、本物の乳房を触っているようだわ」 「こっちはどうかな?」  …
  • 第五話 武者紫⑮

     その夜、また夢を見た。   今度は時代劇ではなく現代である。場所はどこかは分からないが、美術館なのだろう。  と思ったのは、何体も彫像が並べられていたからだ。  石像もあればブロンズ像もある。すべて…
  • 第五話 武者紫⑭

     高瀬課長の相手はいったい誰だったんだろう?  結局、女は一言もしゃべらなかったから、誰か分からない。  おっと、考えるのは後だ。ここから早くここから脱出しなきゃならない。私は急いで服を着て、小走りで…
  • 第五話 武者紫⑬

     ああ、なんという酷い命令!  会議室で全裸になって写真を撮れだって!  服を脱いじゃったら、誰か入ってきた時、どうしようもできないじゃないの!  会議室に隠れるところなんかないから、私の恥ずかしい姿…
  • 第五話 武者紫⑫

    (四)  今日は出勤日だ。  会社でうまくやれるだろうか? とても心配だった。  昨日は縄姿で街へ出た。とはいっても、人との接触は店員に限られている。でも今日は一日中、会社という閉鎖空間の中で上司や同…
  • 第五話 武者紫⑪

     その夜、また夢を見た。  長い黒髪を後ろでまとめた「私」は藁筵の上に正座している。全裸で、紫色の縄で後ろ手に縛られているのだけど、縛り方が普通の菱縄ではない。よく時代劇に出てくる女囚の縛り方なのだ。…
  • 第五話 武者紫⑩

    (三)  昨日の寒さがウソの様な秋晴れの暖かい日になった。  会社に休みの連絡を入れた後、今日一日どう過ごそうか考えた。  まず、縄を隠す服を探さないといけない。  それから――。  何も思いつかない…
  • 第五話 武者紫⑨

     夢を見た。  時代劇にでも出てきそうな部屋だった。  天井には太い梁が通っていて、そこから縄が数本伸び、ギシギシと軋んでいる。張り詰めた縄をたどると、そこに武者紫の縄衣装を着けた「私」がいた。梁から…

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