第五話 武者紫⑪

2021年01月24日

その夜、また夢を見た。

長い黒髪を後ろでまとめた「私」は藁筵の上に正座している。全裸で、紫色の縄で後ろ手に縛られているのだけど、縛り方が普通の菱縄ではない。よく時代劇に出てくる女囚の縛り方なのだ。
腰縄の縄先を後ろから脇の下に通して前で首に回し、首の下で交差させ結び目を作る。縄先をもう一方の脇の下に通して背面へ。腰縄をくぐらせ、その縄で手首を腰縄と一緒に縛る。高小手になる様に腕を持ち上げておいて、縄先を首縄に通し、下におろして手首を固定する。二本目の縄を片方の腕に巻きつけて縛り、背面を通してもう一方の腕に巻く。余った縄を前に移動させ腰縄の中央と結んだ後、背面に回して背中を縦に走る縄の下を潜らせ、縄が交差している処に巻きつける。
こうすると乳房を囲む大きな菱形できる。大菱縄ともいわれる縛り方だ。
「私」が女囚だとすると、周りにいるのは役人だろうか? いや、もっと時代が古いかもしれない。

男達の話し声が聞こえてくる。

「これが姫君か? なかなか別嬪じゃな」
「左様、殺すには惜しいかと……」
「とはいっても、お館様の命に逆らうわけにはいくまい」
「御意。しかし、ご命令は、ただ殺すのではなく、大いに辱めた後、時間を掛けて嬲り殺せというもの」
「酷いよのう。潰滅させた敵の姫君で、お側女にするおつもりだった女子だろう。お館様のご命令に逆らったばかりに、こんな事になるとはな」
「鼻っ柱の強い姫君で、お館様を愚弄したという噂です……」
「なるほど。それでお館様の怒りを買ったわけじゃ。さて、どのような刑罰を与えるのかな」
侍は書状に目を通す。
「なんと、裸で馬に乗せ市中引き回しの上、磔獄門とある。極刑じゃな。これは酷い。股裂きを行い放置せよとあるぞ」
「酷い事。それぞれの脚を竹に縛り付けた上で、両足首に縄を掛けて吊り上げるのですな。どこまで脚が開くか? 局部を剥き出しにして、痛みに苦しむ姿を楽しむ。どのくらい放置されるので?」
「気を失えば水を掛けて意識を戻し、炎でアソコを灼けとある。ずいぶん、手が込んだ仕置きじゃ」
「これを一日繰り返した上で、竹槍で串刺しにする」
「竹槍ですか! それは酷い」
「じゃがこの頃には、もはや痛みなど感じなくなっておろう」
男達は残酷極まる刑罰について平然と喋り続けている。「私」は気丈にも顔を起こし口を真一文字に結んで男達の話を聞いている。

「さあ、では始めるか」
侍が縄を強く引いた。

馬が繋がれている。縛られた姿のままで鞍の上に乗せられる。
鞍には突起物が取り付けられていて、「私」はそれを女陰にずっぽり突き刺して坐る。動かない様に両足を鐙に縛り付けられる。
「さあ、女、これから街の中をゆっくり一回りして刑場に向かうが、何か言っておきたいことはあるか?」
「ありません!」
「私」はきっぱりとそういうが、その瞬間、涙が一筋頬を伝う。
馬子が轡を引くと、馬がゆっくりと動き出す。
その時、「私」はこの刑罰の意味を理解した。
馬が歩むたびに、身体が持ち上がり、そして沈みこむ。その度に、鞍に取り付けられた張り型が「私」を犯すのだ。媚薬が塗られているようで、女陰がすでに灼けるように熱くなっている。その爛れた柔肉を張り型が擦りつける。
身体の中に甘い痺れが芽生えている。先ほどまで、どんな辱めにも負けまいと胸を張り、必死に抵抗していた「私」は、もはや堪えきれなくなっている。
パカパカと馬がゆっくり歩む。裸の「私」が馬上で悶えている。
その様子を、沿道に集まった街の人々が見つめている。
ついこの間までお姫様であった「私」は、今は惨めな罪人となり、肌を人々の眼に晒しながら、なぜか頬を上気させて、馬上で淫らに腰を振っているのである。
刑場が近づいている。
「私」はこれから自分の身に降りかかるであろうおぞましい災厄を男達の話から理解している。しかし、身体は狂おしい激情に支配されていて、淫らな喜びに溢れる「今」を生きることに精一杯なのだ。
狂おしいばかりに首を振り、涎を流してヨガリ狂う「私」を乗せた馬は一歩、一歩刑場に近づいている。

目が覚めた。

うなされていたようだ。
嫌な夢だった。身体中がすっかり汗で濡れてしまっている。
また、縄が少しきつくなった気がした。

  • 筆者
    office-labyrinth
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