第五話 武者紫⑯
「ほんとに温かいぜ」
高瀬課長が「私」の乳房を弄っている。里美も「どれどれ」と手を伸ばす。
「ほんと! それに柔らかいわりに張りがあって、本物の乳房を触っているようだわ」
「こっちはどうかな?」
高瀬課長の手が「私」の股間に伸びる。そして指でクリトリスを触る。
快感の嵐が襲ってきた。どうやら人形に加わる刺激が生身の私に伝わるらしい。
「この淫口から溢れている愛液なんかも本物そっくりだな。でも人形だから、愛撫しても感じる筈はないよな」
高瀬課長は指を動かしながら、「私」の顔を覗き込む。もちろん、作り物の「私」は悶えたりしない。でも、かわりに生身の私が身悶えしていた。でも、私が人形を動かすことはできない。私はただ人形が感じているであろう感覚を共有しているに過ぎないのだ。つまり、私は人形に加えられた行為をひたすら受け入れることしかできない。
「反応がない」
「当たり前よ。相手が悶えないと面白くもなんともないんでしょう」
「ああ」高瀬課長が顔をしかめる。
「箱の中には何が入っているのかな?」
里美はそういうと箱の中のものを調べ始めた。
「バイブが何種類かあるわ。大きいわ、とっても効きそう! これはアナルバイブかな」
「おい、目がとろんとしているぜ。責めて欲しいのか?」
里美は自分をからかう高瀬課長を無視して、「私」の前後の穴にその巨大なバイブを突き刺した。
ああ、やめて、やめて、そんなの! とっても太くて苦しいの。でも、そんな叫びは二人には届かない。
「さてと、じゃあスイッチ入れてみるわね」
二つのバイブが唸り音を立てて「私」の中で暴れ始めたのだ。肉が抉られる。二つの振動が共鳴している。
いいわ、いいのよ、里美のいうとおりだわ。これとっても効くわ。もうイキそうよ!
アソコとお尻に突っ込まれた二つのバイブが唸りながら、私をどんどんと高みに誘っていく。
あっ、そこそこ、ああっ、イクわ、イクッ! イクッ!
頭の中が真っ白になって、私はイッた。でも、「私」の人形は無表情な顔を二人に向けているだけなのだ。
「反応ないから、あんまり面白くないわ。ね、もっとすごいのやろうよ」
なんだって! こんなにヘロヘロになっているのに。何をしようというのよ!
「拷問道具があるって書いてあったわね。どれどれ。おっ、これは畳針ね」
里美は長さが十五センチはある太い針を取り出し、高瀬課長に見せた。
「いいね、乳首に突き刺してみるか」
なんですって! そんな太い針を刺そうというの! やめて、やめて、そんな酷いこと、もうやめてぇっ!
「ふふ、面白いわね」
里美は「私」の乳首をつまんだ。針の先を肌にあてる。
痛いっ! いやだ、いやだ。やめて、やめて! 痛みにもがき苦しむのは人形じゃなくて私なのよ!
「ピアスもそうだけど、貫通させるのはわりと難しいのよ」
と里美が知った顔でいう。
「皮膚が柔らかくて曲がるから、針のところの皮膚が盛り上がるんだけど、なかなか突き抜けないのよ。それで焦って針を動かすと痛さ百倍ね。板とかゴムとかを当てやれば一気に抜けちゃうけど」
「なんでそんな事知っているんだよ。乳首にピアス入れたことがあるのか」
「き、聞いた話よ……」
里美は否定するがしどろもどろだ。
「やるわよ。板もゴムもなし。まあ、人形だから、時間がかかっても痛いなんていわないし」
そんな! 痛いの私なのよ。里美、そんな事もう止めようよ!
里美の手に力が入ったのがわかる。針が乳首の皮膚に穴を開け、肉の中に押し入ってくる。激痛!
脂汗が毛穴からドッと吹き出てくる。失神してしまいそう。
「簡単にはいかないわね。針先が出て来ない。よし、こうやって」
里美は針をぐりぐりと回す。なんとか皮膚を貫通させようと力をこめる。
うわあああっ! 痛い、痛い、痛い!
私はハアハアと荒い息をつく。意識が遠ざかっていく。
「だいぶ通った。ほら、肉が盛り上がっている。もうちょっとで抜けそうだ」
里美は一段と力をこめる。
ぎゃああああっ!
私は大声をあげて、夢から目覚めた。