すべては秘密の夜から③
(二)
レースのカーテン越しに朝の日差しを感じて、私は目を覚ました。
胃の辺りが重く、吐き気がする。
ここはどこだろう?
ハッとして私は起き上がった。
着ているものを見る。
男物のパジャマ。素肌の上に着ている。
どうして? 周囲を確かめる。
きれいな部屋だ。
私の小さなアパートとは大違いの明るい部屋。北欧風の洒落た家具が置かれている。そんな夢のようにきれいな部屋のベッドの上に私はいるのだ。
周りには誰もいない。
部屋はワンルームのようだ。かなり大きい。端の方にダイニングテーブルが置かれている。朝食が用意されているのが見えた。私はそちらに歩いて行く。
紙が一枚置いてある。私はそれを取りあげて読んだ。
「昨日はどうも酔わせてしまったみたいでゴメン。
僕は、朝早くから仕事に行かなければならないから、先に出かけます。朝食を用意したので食べて下さい。コーヒーはポットの中にあります。
出かけるときは鍵をかけて下さい。僕は合鍵を持っているので大丈夫です。鍵はまた会ったときに返してくれてもいいし、もし、二度と会いたくないなら郵送してくれてもいい。僕の名刺を置いていきます。
P.S. そのままの姿じゃ窮屈そうだったから、服を脱がせて、パジャマを着せました。それ以外は何もしていないから安心して下さい。きれいな身体を拝ませてもらいました、あしからず――
浅井啓太」
私は思わす赤面した。そして、我に返った。
今、何時だろう?
時計を見ると、既に八時になっていた。
会社に行かなければならない
しかし、昨日と同じ服装で行くのはためらった。それに二日酔いで頭がズキズキと痛い。
いろいろ悩んだあげく、今日は休もうと決めた。そう決心すると少し気が落ち着いた。
啓太が作ってくれた朝食は胃が受け付けなかった。コーヒーをカップに注ぎ、飲む。口の中にほろ苦さが拡がった。
昨夜、何があったのだろうか?
あのバーで啓太とお酒を飲みながら話をしていた。そして、そこまでしか記憶がない。
我を忘れた自分が恥ずかしかった。
啓太に自分の醜態を見られてしまった。それに――自分の身体も!
八時半になった。バッグから携帯を取り出して、会社に電話した。
誰が出るのだろう? 真理絵でない事を祈る。
「もしもし、山田産業です」
若い男の声がした。営業の木下君らしい。
「あのう、総務の岩室ですが……」
「ああ、岩室さんか、おはようございます」
「おはようございます。あのう、高瀬課長来られていますか……?」
「いや、まだ見えてないけど……」
「あのう、今日はちょっと身体の調子が悪くて、お休みさせていただきたいんですが。課長が来られたらそうお伝えいただけますか?」
「オーケー、オーケー。じゃあ、お大事に……」
「明日は出られると思います」といい終わらないうちにガチャリと電話が切れた。
あっけなかった。
会社への連絡が終わり、幾分、罪悪感を感じながら、さてどうしょうかと思った。
啓太の帰りを待つという手もある、でも、いかにも物欲しげだ。やはりこのまま立ち去る事にしよう。
部屋を探すと紙とボールペンがあったので、メモを書いておくことにした。
「ごめんなさい……
とてもご厄介をおかけしてしまって。もう、穴があったら入りたいくらいです。
鍵はお返しします。ぜひ、お礼をさせて下さい。
連絡先は、「090-9987―××××です。
岩室玲子」
このパジャマをどうしようかと迷った。
私の体臭がしみ付いている。持ち帰って洗って返すこともできる。でも、結局、そのままにしておく事にした。
自分の香りを残しておこうと考えたのだ。
元の服に着替えようと思って、パジャマを脱ぐ。
その時、衝撃が走って、身体中が熱くなった。
パジャマの下は全く何も着けていなかったのだ。
パンティも脱がされてしまっていた……。