エロスの涙が滴る⑭
なんとかしなければならない、なんとか……
頭の中ではそう思うのだが言葉にならない。
でも、なんとしないといけないと、力を振り絞って途切れ途切れにいう。
「お……お……ねが……い……、くる……しい」
「見ておれんな」
激しい苦痛の中で総髪の男の声が聞えた。
「このままだとせっかくの身体が壊れてしまう。喋らそうとする言葉が難しすぎるのだ。竜造、もうすこし手加減してやれ」
フフフという笑い。そして、竜造の声。
「旦那様からお優しいお言葉があったぞ。感謝するんだな」
赦される!
助かったという思いが胸の中にこみ上げてきた。
その時、髪の毛を掴まれ「おいっ、なんとかいえっ!」という罵声とともに、頬をぶたれた。
はっとして、玲子はやっとのことで答えた。
「あ……ありが……とう……ござい……ます……」
「鼻水を垂らして穢い顔だな。身体が壊れたら元も子もないから、簡単にしてやるとするか。よく聞けよ、こういうのだ。『おマンコに指を突っ込んで、子宮をガクガク揺さぶって、玲子を天国に逝かせててください』どうだ、簡単だろう」
「あ、ありが……とう……」
力を抜くと気絶してしまいそうである。とてもこんな状態で言葉になど集中できない。体重を支えている右側の脚もすでに疲れきってブルブルと痙攣している。もう限界なのだ。
でも、いわなきゃいけない。いわなきゃいけないのだ。
玲子は歯を食いしばり、気力を奮い起こした。
この苦痛に打ち勝って責めを終了させる。
「いいますぅ……お、おマ○○っ……に……手を……突っ込んでぇっ……」
まるで血を吐き出しているようだった。
一言一言いう度に、身体の中からどす黒い血の塊が吐き出される。
苦しい……苦しい。
「そうだ、そうだ……なかなかいい調子だ。さあ、そのつぎだ」
乳首を捻られた。
この上なんということをするの。
玲子は「耐えるのよ」と自分に言い聞かせる。なんとか耐えてここを乗り切るのだ。
もう少し、もう少しの辛抱。
「し、子宮を……」
「そうだ、そうだ。子宮をどうしてもらいたい?」
「子宮を……ガクガクと……ゆっ……揺さぶって」
そこで止まった。そのつぎの言葉がなんだったかどうしても思い出せない。
いけない、いけない。
焦るほど頭の中が真っ白になる。
「惨めな奴隷」、「いやらしいおマ○○」、「内臓を揺さぶる」、「掻き回す」などの言葉が頭の中でぐるぐると回転しだした。
これらがどこに当てはまるフレーズなのか判然としない。
だから、つぎを言い出せない。
間違うと最初に戻らなければならない。最初のフレーズがなんだったかすっかり忘れてしまっている。
そのとき、「天国に逝かせてください」という言葉が頭の中に現れた。
そうだ、これだ。これなのだ。
「子宮をガクガクと揺さぶって……天国に逝かせてくださいっ!」
玲子は一気にそういうと、竜造の反応を覗った。
黙ったままだ。
これまでは直ぐに否定された。そうでないのは、これが正解ということか?
終わった! やっといえた。
これでいいのだ。
玲子はフーッ安堵の息を吐き出した。
そのとき、乳首が凄い力で捩られた。
「痛いーっ!」
玲子は大きな悲鳴をあげた。
「惜しかったな。一箇所間違えた!」
「……」
「『天国に逝かせてください』ではなく、『玲子を天国に逝かせてください』だったのだ。些細なようだが、間違いは間違いだ。さあ、最初からもう一度だ」
その言葉で力が抜けて、必死の思いで突っ張っていた右足がガクンと崩れ、全ての体重が鴨居に縛り付けられている左足首にかかった。
股部が伸びきり、関節がミシミシと音立てる。猛烈な痛みが玲子を襲う。
――ああっ、もう耐えられない。なんとでもしてぇっ! 玲子は心の中で叫んだ。
そして、意識が次第に遠のいていった。
それからも、しばらく責めが続いた。失神しては、頬を叩かれて、また地獄に引き戻される。その繰り返しである。身体の感覚がもう無くなり、力なく左足で鴨居からぶら下がる。朦朧とした意識の中で、玲子は言葉を喋る。そして、また、間違えて罰を加えられた。
結局、玲子は赦されたが、最後まで本当に間違わずにいうことができたのかはあやしい。
玲子は肉体的にも精神的にも消耗しきっていた。
左足が鴨居から下ろされた。ずっと一つの姿勢を保っていたため、姿勢を変えると、すべての関節が悲鳴をあげた。楽な姿勢に変わるための動作がこんなに苦しいのが意外だった。
玲子は床に足を下ろし、立ち縛りにされた。
朦朧とした中で、男達の会話が聞こえる。
「ずいぶんと時間がかかったな。身体がもうボロボロなのではないか」
「肉体はまだまだ大丈夫です。こうやって、精神をぶち壊しておいて、いいなりになる悦びを頭に刷り込んでいくのです。様々な肉体と精神の責め、それからそれに結びついた形で悦びを与えてやります。一週間もあれば、従順なマゾ奴隷に変化します、旦那様」
「なるほど、ならどんどんやれ。そして牝奴隷を作りだすのだ」
「それで、つぎの責めですが、旦那様にも参加していただければよろしいかと」
「何をするのだ?」
「この女の希望どおり、おマンコを責めます」
「そんなに簡単に望みを叶えていいのか」
「そう簡単に悦びは与えません。そろそろ、関節の痛みが引いてくるでしょう。すると、こんどは猛烈に男が欲しくなってきます」
「たしかに、腰が動いて、下の口がパクパクと息をし始めたわ。まるで、欲しい、欲しいと言っているようだ。それで、どうする?」
「もう少しで、狂いそうになるでしょう。手が自由なら、自分で性器を血が出るまで、掻き千切ってしまうところです。ですが、縛られていて、それは叶いません。狂おしいまでの欲情を抑えることができないのです」
「放っておくと狂ってしまうか……」
「多分。その一歩手間で、少しだけ報酬を与えます」
「イカせてやるのだな」
「イカせません。まずは、軽く……それから、責めます。責めと快楽はセットでなければなりません。そして、次第に責めを強くします。強い責めのあとにはより大きな快楽の報酬があることを知らせてやります。次第に変わっていきますよ」
「おもしろそうだ」
「ええ、どのようになるか、お楽しみに」
玲子は確かに男達の会話を聞いていた。だが、それが何を意味するのか、今の玲子は考えられる状況にはなかった。