一万一千本の鞭⑥
(三)
夏の強い日差しの中で、鞭打ちが延々と続けられていた。
玲子は汗みどろになって打撃に耐え、その後の性技に身を捩って悶えた。
つぎの標的は胸だった。はじめに膨らみの根元を打たれ、次第に先端に向かって進んだ。そして、乳首を繰り返しぶたれた。
左右の乳首につぎつぎと鞭が当たる。ビシッビシッと鋭い音を立てて鞭が当る。
乳首が痛い。千切れそうだ。
玲子は痛みに耐える。
「うっ、うっ、ううっ……」
玲子は呻く。呻きとともに吐き出された唾液が腫れ上がった乳房に落ちて下へ流れ、先端の充血してもっこりと膨れ上がった乳首に集まり、その濡れた乳頭めがけてまた鞭が飛ぶ。
打擲は休みなく続く。。
玲子の身体から力が奪われていく。力だけでは無く、思考さえも奪っていく。もはや何も考えられない。
痛いという感覚すら薄れ、痺れだけが感じられる。
ジンジンとした痺れ、甘美な痺れ。その甘い感覚が身体中に拡がる。胸苦しくなって身体を捩る。肛門をすぼめる。尿道を締める。突き上げてくる恍惚感。思わず仰け反りかえる。縄が皮膚に食い込む。肉に食い込む。拘束感が触媒になって、いっそう快感が強くなる。口を開けて熱い息とともにたっぷり涎を吐き出す……
鞭が止まった。
痛みが無くなった筈なのに、逆に身体の中心がキューッと締め付けられ、もはやじっとしていられなくなった。
身悶えして身体を動かす。縄が食い込んでくる。それが切なさを膨れ上がらせる。
玲子は自分の身体にいったい何が起こっているのか分からなかった。
混乱の中で、玲子は大声で叫んでいた。
「や、やめないで!」
玲子は自分の言葉に驚いた。。
鞭打ちを求めているのだ。
「もっとぶって欲しい」といっているのだ。
ぶたれ続けると、ぶたれることに慣れていき、その刺激が常にあるものだと思い込む。そして、刺激が無くなると、その状態に耐えられなくなる。
ぶたれている間は全神経がぶたれることに集中している。頭の中には鞭しかない。そして、そのうち鞭の存在も消え失せる。刺激がある状態が普通になり、刺激を受けていることさえも忘れる。そして、その刺激がなくなると、頭が混乱し、必死になって元の状態を求めようとする。そして、鞭打ちを懇願する。
女はまさに竜造の術中にはまっていた。
「もっとぶって、お願い!」
竜造は女の希望を無視した。そして、別な刺激を与える。今度は性器に対して。
蜜が溢れる花壺の中心を、そして勃起した花芽を、指で責めていく。
鞭とは別の、蕩けるような快感を味わせる。
ビチャビチャという淫靡な音が部屋中に響き渡る。
竜造は女の反応を観察している。タイミングを計っている。
たまらない、たまらない、たまらない。
身体の中に大きなうねりが生じている。
そのうねりは次第に大きくなり、玲子の身体を翻弄する。
「あぁああっ、いいっ、いいわぁっ」
身体が持ち上げられ、宙を飛び、そして沈み込む。持ち上げられ、宙を飛び、沈み込む。また、持ち上げられ、宙を飛び、沈み込む。
次第に振幅が大きくなっている。どんどんと高みに放り上げられる。そして、その分、空中を浮遊する時間も長くなる。
空高く放り上げられ、そのまま快楽の中を泳ぎたい。それが玲子の願いとなった。
「もっと、もっと、もっと!」
玲子はあられもない声を上げ続ける。
もう絶頂は目の前だと思った。空高く放り上げられ、そのまま空中を泳ぎ続ける。そこをめがけて突き進む。
大きな波。身体が持ち上げられ、空中を浮遊する。
「いくうっ……いくうっ……いくうっ……いくうーっ!」
玲子は大声で叫んでいた。玲子は浮遊する。だが、それはそんなに長く続かなかった。
もっと、もっと、もっと! 今度こそ!
つよく、つよく、つよく、つよく!
だが、玲子のその望みは叶わなかった。今度も男は手を離し、玲子はまたもやお預けをくってしまったのだ。あと一歩のところで無惨にもゲーム終了。
「ど、どぉおしてぇっ!」
たまらず、玲子は不満の声を上げた。そして、くやしそうに唇を噛んだ。
「なんだとおっ!」
玲子はその声で現実に引き戻された。竜造が憤怒の形相で目の前に立っていた。
竜造の掌が玲子の頬に飛んだ。
「ひーっ!」
「まだわからんのかっ! 奴隷の分際で指図するなっ! その曲がった根性をたたき直してやるっ!」
そういうと、竜造は鞭を取る。
今度は局部めがけてバシッ、バシッと連続して鞭が飛ぶ。
こらえきれず、玲子は悲鳴をあげる。
打擲、悲鳴、打擲、悲鳴、打擲、嗚咽、打擲、そして……。
玲子は悲鳴ではなく、ヨガリ声を上げていた。
バシッ、バシッ
「ああぁーっ……いいい……」
バシッ、バシッ
「あうぅーっ、いいわ、いいわぁああっ……」
バシッ、バシッ
「うわぁぁぁあっ……あああっ……おかしくなりそうぉぉおっ!」