思いがけない贈り物①
(一)
私は元の生活に戻っていた。あれから啓太からの連絡は途絶えている。
こちから携帯に電話しても、「この電話は電源が入っていないか、電波の入らない場所にあります」というアナウンスが返ってくるだけだった。
電話ではらちが明かないのであのマンションを訪ねてみたが、ドアは固く閉ざされていて、チャイムにも反応しない。中に人がいる気配もなかった。
一体どうしてしまったんだろう。
海外にでも行っているのだろうか?
私は心配になった。
振られてしまったのではないかという思いにとらわれた。
結局、あの時だけの関係だったのかも知れない。啓太にとって私はセックスを楽しむためだけの女――俊介の時と同じなのだ。
ひょっとして……私があまりにも激しく乱れるので、イヤになってしまったのかしら? そんな考えが浮かび、頭の中を支配した。
仕事を済ませてうら寂しい部屋に帰る。
小さなワンルームマンション。「リバ-サイド・マンション・トキワ」というのが建物の名前だ。いかにも閑静な場所に建つ豪華マンションのイメージだが、実のところはドブ川の側に建つトイレを兼ねた浴室と小さなキッチンしかない狭いアパートだ。
ここにもう八年も住んでいる。その時間が壁に染み付いていて、所々黄色く変色していた。
小さなテーブルの上にコンビニ袋を置き、電気ポットのスイッチを入れ、弁当をあさる。我ながら情けない。
ごはんを食べると、ベッドの上で大の字になる。あの日からこっち、テレビを見る気にもならない。
目を閉じる。
啓太が耳元で甘く囁いている。
はっとして隣を見る。でも、誰もいない。たった独りだ。
寝そべっていると、いつも啓太の事やあの日のでき事を思い出した。喘いでいる自分の裸体が見えるようだった。
啓太を訪ねていったのが金曜の夜、そしてそのまま、ずるずると日曜日まで啓太の部屋で過ごすことになってしまったのだった。
土曜の朝、柔らかな光の中で目覚めた。
隣を見ると啓太の裸の胸がゆっくりと上下している。よく寝ているようだ。とても幸せな気分になった。
腰の辺りが重かったが、それは満ち足りた疲れだった。夕べ激しく愛しあった証なのだ。
俊介の一方的で排泄するだけのセックスとは違って、啓太とのそれはとても魅惑的だった。
身体に官能の火をつけられ、焦らしに焦らされた結果、私はまるで獣のように啓太を求めた。
めくるめく悦びに悶え狂い、これまで味わった事のない絶頂を何度も経験した。
信じられないほどに乱れてしまう自分が怖くなった。
でも、啓太の隣で目覚め、平和で温かな朝を迎えた。
私は、「どうかこのまま、この状態が続きますように」と祈った。
そして、このままここにいよう、啓太といっしょに週末をすごそうと心に決めた。