きらめく夜の一部始終⑧

(三)

 

 私は恍惚感に満たされていた。啓太に抱かれ、彼が首筋に唇を這わせている、たったそれだけで……。

ふぅーっと息を吐き出す。息とともに、身体の中から魂が抜けていくようだ。

窓に手をつく。腰を突き上げる。そして性器を露出させる。啓太に命じられた通りに。

焦らしに焦らされ、火がついた身体が啓太を求めている。

啓太に抱かれて結合を遂げる――私はそのことばかり考えていた。

啓太が離れ、数歩下がって私のあられもない姿を眺めている。

「もっと、お尻を高く突き出すんだよ。そう、そう、それでいい――」

スタンドの灯りの下で、私は操り人形の様に命じられた通りに動く。

「いい格好だ。魅力的だ。たっぷり濡れているのがよく見えているよ。どう、僕が欲しいかい?」

啓太は意地悪だ――分かりきっていることを何度も尋ねてくる。

無防備にお尻を突き出した私の情けない姿が鏡に映っていた。

「ねえ、お願いだから――早く来て」

私はとても堪えきれなくなって、そうお願いした。望みをかなえてくれるという約束だったのに、いっこうに性行為に入る気配をみせないのだ。

「悶えているところが、なかなか可愛いよ」

啓太は手を伸ばして、指で子供がおもちゃを触るように私の花弁を弄んでいる。

私はくなくなと唇を震わせ、甘い喘ぎ声を上げる。

「とても、感じやすいんだね。これはどう?」

熱く煮えたぎる花壺の中へ指がめり込んでくる。くちゅくちゅという音がする。私は奥底からトロトロと蜜を吐き出しているのだ。

「だめ……もうだめなの……ねえ、早く!」

私はいたたいまれなくなって腰を振った。

くねくねと、啓太を求めて――

腰が掴まれた。いよいよだ。いよいよ願いが叶う。

 何か固いものが肉に当たる。

 私は期待に胸を膨らませる。

でもそこまでだった。このまま腰をせり出せばいいのに。

どうして?

どうして、そこでぐずぐずしているの?

「早くいれて……」

 私はお願いする。でも、啓太は動かない。

 何をしているの? 早く! 早く!

啓太の声が聞こえた。

「僕の事を愛しているといってくれないか? 僕は玲子の愛を確かめたい」

愛を確かめる?

確かに好意は持っている。だけど、まだ逢ったばかりだ。

啓太の手が私の乳房に伸びる。悪戯な指が乳首をゆっくりと転がしている。

どうしよう? どうしよう?

愛している」といえば、一夜の肉体関係では済まなくなる。いくところまでいってしまうだろう。そして、元に戻れなくなる。

 でも、「愛している」といわない限り、つぎには進めない。そうしない限り、私は追い返されるかもしれない。

 どうする? 

私は啓太と愛し合いたい。

でも、ちょっと怖い気がする。優しいけれど、啓太がどんな人間か分からない。彼のことを何も知らないのだ。あのバーで逢ったばかりなのだ。そんな男に私の将来を任せていいのか?

もう遅い! ここまで来てしまっている。すでに私の身体は彼のものだ。さっき、彼のモノを飲み込んだりしているではないか? ここまで来ていて、何をためらっているの? 彼と一緒にいればこんな素晴らしい悦びが得られるのだ。

私の思考は乱れに乱れていた。

「どう? 僕を愛しているの?」

また、啓太が訊いてきた。

身体のうずきが一段と大きくなってくる、私はもう堪え切れなくない。

「あ、愛してます……」

 いった。いってしまった。身体の力が抜けていく。

もう元へは戻れない。

  • 筆者
    office-labyrinth
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