めくるめく出会いの風景④

 その時、しのぶが突然、

「よく来てた花岡さん、ちっとも来なくなったわね」

といったので私は慌てた。花岡は俊介の苗字だったからだ。

「会社を代わったってよ」

真理絵が知らなかったの……という顔でいった。

「そうなんだ。どおりで最近見かけないと思ったわ。でも……あの人、嫌らしい人だったなあ」

「そーよね、女の子と見ると声掛けまくってたわね。食事に誘ったり、デートに誘ったりね」

「食事の後に、ホテルに誘われた子もいるんだって……断ったら、むっとして帰って行ったそうよ」

「へえ……嫌らしい奴だなあ」

私はそれを聞いて唖然とした。

私は何も知らなかったのかもしれない――俊介は別に私を求めていた訳ではなく、誰でも良かったのだ。

自分を手玉にとった俊介が憎らしかったし、そんな男に騙されて身体を許した自分が恥ずかしかった。

しかし、もう終わった事だ。

あんな男と別れて良かった。私はそう自分に言い聞かせた。ともかく、この話題が早く終る事を祈った。

幸い、その話題はそれ程長く続かず、旅行の話や、食事の話に変わっていった。

私はほっとした。真理絵が十月に行われた社員旅行の話を持ち出した。

「それにしても、うちの男達もスケベばっかりねぇ……」

「ほんとにね。みんな浴衣姿の私たちをジロジロ見るんだから」

「私、林常務にお尻触られちゃったわ……」としのぶが告白した。

「へー、あのスケベ親爺ったら。新入社員の女子ばっかりにお酌させて、ジロジロ身体を見るんだよ」

「だけど、真理絵ちゃん、浴衣の隙間から胸の谷間みせてたけど……あれってわざとじゃないの?」としのぶが意地悪そうに聞いた。

「ばれたか。色気で迫ってボーナスあげて貰おうかなと思って……」

私たち三人は転げるように笑った。

「ところで……あのときお風呂で見ちゃったんですけど、玲子先輩ってきれいな身体してるんですね」

真理絵はふとそんなことをいった。すると、しのぶも

「そうそう、私も驚いちゃったわ……色が白くて、抜群のプロポーションだし」とその話題に乗ってきた。

「先輩、もったいないですよ」

「……何がかしら」

「せっかく土台がいいのに、服装とか、髪型とか。化粧とか変えたら、男の人が放っておきませんよ」

「そうかなあ……私なんて、もう若くないし……」

「そんなこと無いですよ。先輩は地味すぎるんですって。もっと冒険しなくちゃ……」

真理絵は目を光らせながら、そう私を持ちあげるのであった。

しのぶもそれに同調して、

「ほんとに玲子先輩みたいなきれいな身体になりたいなあ……」

と羨ましそうに言った。

私は若い彼女達にそう思われているのだと知って、悪い気がしなかった。

  • 筆者
    office-labyrinth
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