恥ずかしい夜③
「あのう……」
「いらっしゃいませ」
きれいに化粧したフロントの女が丁寧にお辞儀をした。
私は思わず顔を赤らめてしまった。コート姿は普通だが、その内は裸同然なのだ。あられもない姿を見透かされているようだった。
「あのう、ロビーに行きたいのですが……」
「ロビー階は六階になります」
「そこに待ち合わせをするような場所がありますか?」
「そうですね。こちらはアネックスタワーの建物になります。こちらでもお待ち合わせスペースはございますが、本館の方が広いです。お待ち合わせの場所はアネックスのロビーでしょうか?」
中々複雑そうである。
「……それがよくわからないんです」
「お待ち合わせですと、本館の事が多いです。そこのエレベータで六階まで登られますと、アネックスのロビーに出ます。そこから本館の方に行く連絡通路がございますので、まずは六階に上られてアネックスのロビーを確認されたのち、本館に向かわれてはいかがでしょうか? 当ホテルは傾斜部に建てられていますので、アネックスの六階がメインの一階に相当します」
中々、的確なアドバイスだ。私は感心した。
「なるほど、ではそうしてみます。本館までは遠いのですか?」
「歩いて五分もかかりません。通路は真っ直ぐですので、分かりやすいです」
「どうもありがとうございました」
そういって、エレベータの前に立った。すでに待っている客がいた。
狭いエレベータに五六人の男性客と乗り合わせた。
胸がドキドキする。
じっと嫌らしい目で見つめられているように感じた。
男たちは五階でエレベータを降りた。どうもそこが宴席のフロアとなっているようだ。
六階に着き、エレベータを降りる。確かにホテルのフロント前に小さなロビーがあった。外人客が二組待っていた。啓太の姿はない。
見回すと、連絡通路が見えたので、メインのロビーに行ってみる事にする。
長いクラッシックな通路を急ぎ足で歩いた。結構、遠い。そして、十五センチのピンヒールはとても歩きにくい!
なんとかそこを抜けると左手にレストランがあった。庭園に面したテーブルは満席だった。さらに進むと椅子とテーブル置いた待ち合わせをスペースにでた。
七時十分である。約束の七時に遅れてしまった。
キョロキョロと啓太の姿を探す。外国人が多く、洒落た服を着た年配の夫婦づれも結構いる。目を凝らして探すが、なかなか啓太らしき人物が見つからない。
ひょっとして、ここではないのかもしれないと思った瞬間、後ろから声を掛けられた。
振り向くと、ピンクのボタンダウンシャツの上に黒のジャケットを羽織った啓太の笑顔があった。