第四話 祭り⑥

2020年01月30日

ズンズン……ズンズン……ズン

太鼓の大きな音がした。
表に出てみて、ここがどこか分かった。ここは永年寺の奥にある社の裏だ。木々が鬱蒼と生い茂り、昼でもなお暗い。
子供の頃……この辺りで遊ぶことは禁止されていた。恐ろしい魔物が棲んでいるから、そこに行ってはいけない、と大人達は諭した。子供ばかりではない、ここは大人も滅多に立ち入らない場所だった。

雪が残っていた。木が茂っているせいで、積もる雪は多くはなさそうだが、日が射さず人が踏み入らないので、残っている雪の量は表より多い。
私はその雪の上に正座していた。全裸で、犬のように首輪で木に繋がれて……。

「ちょっと待っとれ!」
信助はそういうと社の中に入り、すぐに両手に大きな荷物を抱えて戻ってきた。
私の前にバケツが置かれた。その中へガラス瓶から液体を入れている。ドクドクと音立てて、液体が落ちていく。それにあわせて瓶の口から空気が泡になって上がっていく様を私は呆然として見つめていた。
ガラス瓶が二本空になると、今度はペットボトルから水を入れていく。一リットル……二リットル……三リットル。今度は太い棒の様なものでバケツの中をかき混ぜ始めた。
私は信助が何をしようとしているのか知っている。
信助が「身体の中を綺麗にするんじゃ」といったけれど、その前に私はなにをされるのか知っていた。
あの太い棒。太いガラス製の筒。先に嘴が付いている。あれが私のお尻の穴の中に入ってくるのだ。
私はじっとその嘴を見つめていた。先が小刻みに揺れている。信助も震えているのだ。
「前に屈んで、尻を突き出すんじゃ」
 その声も震えていた。
背中の縄がつかまれて、上半身が前に押し出される。雪の上に顔が押しつけられる。お尻を突き出した姿勢。きっと、私のなにもかもが見えているだろう。
私は雪の上で嗚咽し続けていた。
冷たい。氷のように冷たいものが、私の中に入ってくる。直腸から大腸の中に冷たさがどんどんと押し入ってくる。
私は浣腸されている。氷のように冷たいグリセリン液をお腹いっぱい、注入されている。大腸の襞の隅々まで、ねっとりとした浣腸液が入り込んでいって、茶色い固形物を膨潤させながら、引き剥がしているのだ。
浣腸器が抜かれて、私は再び雪の上に正座させられた。
寒い。雪の冷たさのせいで、すっかり足の感覚がなくなっている。冷気も肌を刺すようだ。その上、お腹が凍るように思えた。

いけない、蠕動運動が始まったようだ。
グリセリンが肛門付近の神経を刺激している。腸の中のものが猛烈な勢いで外に出ようと動き始めていた。
「お腹が痛い……トイレに行かせて……」
私は声を震わせた。
「だめじゃ。トイレは表ぞ。人通りが多い。これにしろや」
信助は琺瑯製のオマルを私の前に置いた。
「ひどいわ……どうして、こんなこと」
男のいる前で排便しなければならない惨めさに私は泣いた。しかし、恥ずかしさより、便意の方が勝った。私はついに堪え切れなくなって、オマルに跨った。そして、ブルブルと震えている信助にいった。
「おねがい、こっちを見ないで……」
私は大きな音を立てて、お腹の中に溜まっていたたものを一気に吐き出した。

  • 筆者
    office-labyrinth
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