第四話 祭り⑨
ズンズン……ズンズン……ズン
私は信助に命じられるまま、寒さに震えながら歩いた。冷たい風の吹く戸外を全裸で歩くのは辛かった。上半身は依然として麻縄で縛られたまま、恥毛はすっかり剃り上げられて秘部が剥き出しになっていた。
私たちは小さなお堂の裏へ出た。
ここは永年寺のどのあたりなのだろうか?
裏口から中に入る。暗い。先の方に灯りが見える。どうやら私たち祭壇の裏側にいるようだった。闇を抜けるとお堂の端に出た。壁の燭台のおかげで、思いのほか明るかった。遣戸はすべて締め切られていた。
チラリと祭壇を見る。扉が閉じられているので、ご本尊を見ることはできない。おかしいと思ったのは、祭壇の前にしつらえてある壇だった。普通こんなものはない。表を向いた一辺が御簾で仕切られているのも妙だった。
さらに近づくにつれて、もう一つ不思議なことに気づいた。その檀の上に、立派な衝立が祭壇に向かって置いてあるのだ。
幅は両手をいっぱいに伸ばした時より広く、高さは胸のあたり、頑丈な脚で支えられていて、かなり力をかけても動かないだろう。いかにも硬くて重そうな素材だった。黒光りしているところをみると黒檀だろうか。驚いたのは板の厚みだ。十センチくらいはある。衝立にしては分厚すぎる。
これは何だろう? そもそも、こんな立派な衝立がこんな貧しい村の小さな寺にあること自体が不思議だ。
私はその檀の上に正座して、待つように命じられた。衝立が正面に見える。かなり変わったものだった。浮き彫りが施されているのだが、よくある花鳥風月の構図などではない。中央に彫られているのは髑髏なのだ。
髑髏の頭を持つ男が坐って、膝の上に乗せた尼さんを抱いている。頭を丸めているので最初は若いお坊様かと思ったのだが、腰の細さや、お尻の大きさ、身体の線の柔らかさは女の人のものだ。尼さんは脚を上げ、背中をくねらせ、顎をのけぞらせて歓喜にもだえている。髑髏は薄気味悪く笑っているように見える。巨大な肉根が尼さんの性器を刺し貫いているところがあからさまに彫り込まれていた。
それだけではない。その像を取り巻くように多数の像が彫られていたのだ。
上にあるのは髑髏男が正面立位で尼さんを犯しているところ、下には後背位でのファックシーンだ。左では尼さんが仰向けで腰を深く曲げ、脚を大開きにして巨大な怒張を受け入れており、右には騎乗位で悶え狂う尼さんがいる。
曼陀羅?
お寺だから曼荼羅があっても不思議はない。でも、こんなものは見たことがない。それに、どうして中央が髑髏なのだろう? お寺に髑髏なんて奇妙だ。
燭台の炎がゆらめき、彫像の影が揺れる。まるでセックスに興じる男女が淫靡に腰を振っているかのようだ。
「あっ!」
私は声をあげそうになった。大きな浮き彫りの周囲に、さらに小さな図柄が見えたのだ。
こちらは線彫りで、光の加減で見えたり見えなかったりする。たくさんの図柄が彫られているようだった。
目を凝らしてみる。絵の詳細が見えてきて、背筋に寒気が走った。
首の取れたの、手足がもげたの、腹が裂けて贓物がはみ出している尼さんが浮き上がって見えたのだ。
なんと、たくさんの尼さんが惨たらしい姿で犯されていた。中には飲み込んだ長大な男根が後頭部から突き出て悶絶しているところや、両脚を大開きにして逆さ吊りにされて、挿入されたまま、おへそのところまで性器を切り割かれている構図もあった。そんなおぞましい線図が、炎の揺らめきに合わせて、浮かんだり消えたりを繰り返しているのだった。