第四話 祭り⑤

2020年01月28日
  • (三)

ズンズン…ズンズン…ズン

太鼓の音がする。まるですぐ側で叩いているようだ。
暗い……ここはどこだろう? 身体が動かない……どうしてしまったのか?
私は床の上に転がっている。腕が背中の後ろで固定されている。それだけではない、身体全体を縛られているようだ。
灯りが近づいてきた。蝋燭の炎が揺れている。
男が部屋の周囲に置かれた燭台に火を点けていく。明るくなって、あたりの様子が分かる様になった。それとともに、私がどういう姿かも……。身体が固定されているので、すべて見えているわけではないが、どうやら私は服を着ていない。

「起きたか」
男が燭台に灯りを点け終わり、私を見て笑った。前髪が薄くなっている。
「信助さん?」
男は驚いた顔した。
「なぜ……分かったか?」
信助は不思議そうに私を見ている。
「私になにをしたの?」
「事務所から猛と一緒に、お前をここに運んだ」
「どうして、裸で縛られているの? なぜ、こんな事するのよ?」
信助はちょっと困ったような表情をして、
「お前は祭の女だが……」といった。
「祭の女……なによそれ」
「今日の祭の供物よ」
私は耳を疑った。いったい、なにをいっているのだろう?
「供物って……なに?」
「今にわかるぞ。昔は村の中で女、調達できたが、今は村の人口が減ってしまって、外で調達せにゃならん。お前が来んかったらどうしょう、と猛がいっとった」
「それじゃあ、今日の同窓会は?」
「そんなもん信じとるんか……」
信助が腹を抱えて笑った。どうやら、ほんとうに、おかしいらしい。
「猛はなんといっとった? 皆んな集まるって……そりゃあ、みんな嘘じゃ。案内はお前にしか出しとらん。男は集まるが、みんな祭で忙しい……」
「どうして、私がこんな目に合うのよ」
「ワシは知らん。猛がお前を選んだ」
「どうして、猛さんがこんな事するのよ!」
「猛は祭の実行委員で、調達係じゃ……」
「そ……そんなひどい事!」
「せんないぞ……ずっとやって来たことだが……」
信助がポツリと言った。
「祭が始まるまでに身体……浄めねばならん」
信助は私の下半身を縛っている麻縄を解き、私を立たせると、「歩け」と私を小突いた。
廊下を歩く。信助が木戸を開けた。外はもうすでに薄暗くなっていた。

  • 筆者
    office-labyrinth
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