第五話 武者紫⑤
「ああ……いいわ…そんなところ、突かれると……わたし……ああっ……そこは……だめぇっ……ううう……い、い、いきそうです……あっ……あっ……」
私は次第に感極まってきて、大きな声をあげる。そして、あの人は、私の反応を楽しみながら、より大きな反応を引き出そうと、私を責めまくる。
「うううっ……うわぁあっ……いいっ……いいっ、また、いきそう……いいっ……ああっ……」
背中の縄を掴んで、私の身体を少し持ち上げた状態で、あの人は激しく腰を振った。私の声は獣めいてくる。
「ううぉおっ……ううぃい……ひいいっ……あああ……わあっ……むむむっ……」
私はもう何回、気をやっただろう。その高まりは押しては引き、引いては押しを繰り返していたが、次第にその間隔が狭くなり、ずっと高まりの中で泳いでいる感じだ。
私はもう、何が何だかわからない。髪の毛を振り乱し、汗みどろの身体を打ち振るわせて、ただひたすら感じている。あまりの快感に、声を発することもできず、身体が硬直し、その後でひくひくと痙攣する。その繰り返しだ。それが何度も何度も続く。くりかえし、くりかえし……何度も何度も……
「うっ」
あの人が私の背中で呻いた。私の中で、あの人のものが、ぐんぐんと大きくなって、爆ぜた。どきんどきんと脈打ち、熱いほとばしりが子宮を打つ。私は、膣をぎゅっと締めて、あの人の精を搾り出し、体内の奥深くに飲み込もうとした。
ああっ、また、あの絶頂感が襲ってくる……私は身体をのけぞらせ、腰をガクガクと揺すった。その後は、小刻みな痙攣だ。止まらない……太股から始まって、下腹部にかけて、びくびく休みなく痙攣する。ああ……頭の中が真っ白だ……私はなんだかわからない……。
私は放心して、畳の上に横たわっていた。どのくらいそうしていたのだろう。すでに、上半身の戒めは解かれていた。
あの人は私の横に座って、お酒を飲んでいた。私が、「うーん」と呻いたのに気がついて、こちらをじっと見つめている。
「気がついたようだね」
私はこくりと頷いた。
「すごい狂いようだった。あられもない大声を出して喚いていた。玲子はとっても淫乱な女になったね」
その言葉は私の胸にぐっと突き刺さった。私は身体を起こすと、あの人に抱きついた。私は泣いていた。涙が止まらなかった。あの人の胸を拳で叩いて、
「ひどい……あなたが、こんなにしたくせに……」
と訴えた。
「悪かった、でも、こんなにセックスを楽しめるようになったんだ」
そういうと、あの人は私の乳房を愛撫し始めた。また、身体中がせつなくなって、いっそう強くあの人に抱きついて、耳元で小さな声でいった。
「ねえ……もう一度……犯して……」
でも、あの人は、それに答えない。暫く黙ったままで、私を抱いていた。そして、身体を離して、立ち上がった。
終わり……なのかしら。
そう思っていたら、あの人は紫色の縄の束を持ってきて、それを私の手に載せた。
「これは……?」
その縄は、先ほど私を縛った縄とは違っていた。みずみずしい紫で、藤の花の様に清楚であった。
「僕が染めたんだ。草木染めだよ。古にならって、紫草を使って染めた。だから色が淡いが、いい味わいになっているだろう」
「ええ、とてもきれい」
「だが、まだ、完成じゃないんだ」
「そうなの? こんなにきれいなのに」
「麻縄って固いんだ。そのままでは、緊縛には使えない。それを鞣して柔らかくする必要がある。それには、蜜蝋や馬油を使う。これも、蜜蝋で鞣している」
「ミツロウ?」
「蜂の巣の中にあるワックス分だよ。昔からいろいろな用途に用いられている」
「そういえば、さっきから甘い香りがしている」
「そう、その蜜蝋を何回も縄に吸わせて、縄を柔軟にしているんだ」
「へえ。手が込んでいるのね」
「玲子に頼みがある」
あの人はそういって、いたずらっぽく微笑んだ。