紫色の夢

  • 第五話 武者紫⑧

     そうと決まれば、今夜はもう何もすることがない。  急にお腹がすいてきた。冷蔵庫の冷凍ピラフを取り出し、電子レンジで温める。食べながら、あの人との事を考えた。  あの人に会ったのは一年前。  最初は普…
  • 第五話 武者紫⑦

    (二)  武者紫の麻縄で縛られた生活が始まった。  あの日、アパートに帰り着くとすぐにコートを脱いで裸になり、縄で縛られているアソコを点検した。電車の中で濡れ出していることに気づいたのだ。  電車は思…
  • 第五話 武者紫⑥

    「なあに?」私は興味津々で訊いた。 「玲子の身体を使って、この縄を完成させて欲しいんだ……」 「えっ……私の身体を使って?」 「そう、緊縛を続けると玲子がいい気分になっていくように、縄も使っているうち…
  • 第五話 武者紫⑤

    「ああ……いいわ…そんなところ、突かれると……わたし……ああっ……そこは……だめぇっ……ううう……い、い、いきそうです……あっ……あっ……」  私は次第に感極まってきて、大きな声をあげる。そして、あの…
  • 第五話 武者紫④

    「ねえ……お願い……」  私はすがる様な目であの人を見つめた。 「なんだい……」 「……」  私はきっと真っ赤になっていただろう。恥ずかしくて言葉が出てこない。 「どうしたんだい?」  あの人はそう言…
  • 第五話 武者紫③

     すぐに帰ってくるというのは嘘だった。もう、日が暮れかけようとしているのに、あの人はまだ帰ってこない。私は鴨居に吊されて、ずっとあの人の帰りを待ちつづけていた。  つま先立ちの姿勢は長く続かなかった。…
  • 第五話 武者紫②

    「きれいだ……やはり、思った通りだ。紫がよく映える」  あの人は、私を立たせて、背中に結んだ縄を鴨居にかけて引っ張り、私を吊り上げ気味で固定してから、少し離れた位置に立って、仕事の出来映えを眺めていた…
  • 第五話 武者紫①

    第五話 武者紫 (一) 「玲子にはきっと、紫が似合う…」  あの人はそういった。  紫――それは、古来高貴な色であった。その紫が私の白い肌に合うという。 「妖艶な朱もいいけれど、玲子には、それより落ち…
  • 第四話 祭り⑯

     歓声が起こった。誰かがこちらにやってくるのだ。  何やら男たちが喋っている。一人は猛のようだ。もう一人の声は識別できない。  荒々しく御簾を掻き上げる音がして、男が私の前に立った。そして、私の顔を覗…
  • 第四話 祭り⑮

    (五)  ズントコ……ズンズン……トコトコ……ズンズン  いつの間にか、太鼓のリズムがけたたましいものに変わっていた。群衆の歓声が聞こえる。祭が始まったようだ。お堂の遣り戸が開け放たれていて、外の音が…