小説

  • 第五話 武者紫⑮

     その夜、また夢を見た。   今度は時代劇ではなく現代である。場所はどこかは分からないが、美術館なのだろう。  と思ったのは、何体も彫像が並べられていたからだ。  石像もあればブロンズ像もある。すべて…
  • 第五話 武者紫⑭

     高瀬課長の相手はいったい誰だったんだろう?  結局、女は一言もしゃべらなかったから、誰か分からない。  おっと、考えるのは後だ。ここから早くここから脱出しなきゃならない。私は急いで服を着て、小走りで…
  • 第五話 武者紫⑬

     ああ、なんという酷い命令!  会議室で全裸になって写真を撮れだって!  服を脱いじゃったら、誰か入ってきた時、どうしようもできないじゃないの!  会議室に隠れるところなんかないから、私の恥ずかしい姿…
  • 第五話 武者紫⑫

    (四)  今日は出勤日だ。  会社でうまくやれるだろうか? とても心配だった。  昨日は縄姿で街へ出た。とはいっても、人との接触は店員に限られている。でも今日は一日中、会社という閉鎖空間の中で上司や同…
  • 第五話 武者紫⑪

     その夜、また夢を見た。  長い黒髪を後ろでまとめた「私」は藁筵の上に正座している。全裸で、紫色の縄で後ろ手に縛られているのだけど、縛り方が普通の菱縄ではない。よく時代劇に出てくる女囚の縛り方なのだ。…
  • 第五話 武者紫⑩

    (三)  昨日の寒さがウソの様な秋晴れの暖かい日になった。  会社に休みの連絡を入れた後、今日一日どう過ごそうか考えた。  まず、縄を隠す服を探さないといけない。  それから――。  何も思いつかない…
  • 第五話 武者紫⑨

     夢を見た。  時代劇にでも出てきそうな部屋だった。  天井には太い梁が通っていて、そこから縄が数本伸び、ギシギシと軋んでいる。張り詰めた縄をたどると、そこに武者紫の縄衣装を着けた「私」がいた。梁から…
  • 第五話 武者紫⑧

     そうと決まれば、今夜はもう何もすることがない。  急にお腹がすいてきた。冷蔵庫の冷凍ピラフを取り出し、電子レンジで温める。食べながら、あの人との事を考えた。  あの人に会ったのは一年前。  最初は普…
  • 第五話 武者紫⑦

    (二)  武者紫の麻縄で縛られた生活が始まった。  あの日、アパートに帰り着くとすぐにコートを脱いで裸になり、縄で縛られているアソコを点検した。電車の中で濡れ出していることに気づいたのだ。  電車は思…
  • アレクサンドロス戦記(八四) 第四章①

    (一)ソロンからアリストテレスへの手紙  グラニコス河の戦いの後にご一報を入れて以来、めまぐるしく日々が過ぎ、連絡がしばらく途絶えてしまった事をお許しください。  先の手紙で書いたように、グラニコス河…