小説
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第五話 武者紫④
「ねえ……お願い……」 私はすがる様な目であの人を見つめた。 「なんだい……」 「……」 私はきっと真っ赤になっていただろう。恥ずかしくて言葉が出てこない。 「どうしたんだい?」 あの人はそう言…
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アレクサンドロス戦記(六五) 第三章⑥
「おい、おい、なんて格好なんだ」 ヘファイステイオンが素っ頓狂な声を上げた。天幕から出てきたアレクサンドロスの格好があまりに異様だったからだ。 「どうだ、似合うだろう」 アレクサンドロスはヘファイ…
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第五話 武者紫③
すぐに帰ってくるというのは嘘だった。もう、日が暮れかけようとしているのに、あの人はまだ帰ってこない。私は鴨居に吊されて、ずっとあの人の帰りを待ちつづけていた。 つま先立ちの姿勢は長く続かなかった。…
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アレクサンドロス戦記(六四) 第三章⑤
(三)戦闘開始 満月のおかげで視界はかなり良好だった。これなら、足元の状況もなんとか見て取れるとフィロタスは思った。 「夜のうちに少数名で河を渡って見張りを始末する。その上で本隊が夜明けまでに河を渡…
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第五話 武者紫②
「きれいだ……やはり、思った通りだ。紫がよく映える」 あの人は、私を立たせて、背中に結んだ縄を鴨居にかけて引っ張り、私を吊り上げ気味で固定してから、少し離れた位置に立って、仕事の出来映えを眺めていた…
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アレクサンドロス戦記(六三) 第三章④
パルメニオンはずっと沈黙を続けていたが、ようやく静かな口調で話出した。心の奥にまで響き渡る声だった。 「まず、この戦いには必ず勝たねばならない。ここで破れるようなことがあれば離反を生み、せっかくのコ…
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第五話 武者紫①
第五話 武者紫 (一) 「玲子にはきっと、紫が似合う…」 あの人はそういった。 紫――それは、古来高貴な色であった。その紫が私の白い肌に合うという。 「妖艶な朱もいいけれど、玲子には、それより落ち…
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アレクサンドロス戦記(六二) 第三章③
(二)遭遇 ソロンの手記 私、ソロンは「グラニコス河畔の戦い」について記すことにする。 これはマケドニア軍とペルシア軍の最初の合戦だが、決して両軍の決戦という訳ではない。だが、王の伝記作家カリステ…
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第四話 祭り⑯
歓声が起こった。誰かがこちらにやってくるのだ。 何やら男たちが喋っている。一人は猛のようだ。もう一人の声は識別できない。 荒々しく御簾を掻き上げる音がして、男が私の前に立った。そして、私の顔を覗…
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アレクサンドロス戦記(六一) 第三章②
夜の帷が下りようとする頃、ニコは再びその天幕を訪れた。 なんと長い一日だったろう。ニコはずっとこの天幕のことばかり考えていた。 ここにいる少女ははいったい誰だろう? どうしてアリスタンドロスの…
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