紙尾真二郎
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アレクサンドロス戦記(十六)第一章②
日が落ちて、ずいぶんと寒くなってきた。放っておくと、アレクサンドロスは夜明けまでずっとこのまま、地平線の彼方を見つめているかもしれなかった。 ヘファイスティオンは早く部屋に戻りたくなった。 「わか…
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アレクサンドロス戦記(十五)第一章①
第一章 戦の準備 (一)ヘファイスティオン (ペラ BC三三四年春) 黄昏時、薄暗くなった回廊を一人の青年が歩いている。 中庭にはまだ日の名残りがあるが、それを取り囲むギリシャ風の柱廊はすでに薄…
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アレクサンドロス戦記(十四)プロローグ⑭
「イリス、大丈夫か!」 ソロンはイリスのもとに駆け寄った。なんとか鼎からイリスを解放してやりたい。イリスを拘束している縄を解こうとする。足首を縛っている縄が解けたが、だが、腹の部分の結び目が固くて…
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アレクサンドロス戦記(十三)プロローグ⑬
服が破れて、上半身がすっかり露出し、胸から腹にかけて血でべっとりと汚れている。 「なんということだ!」 ソロンは呻いた。 イリスは腰と両方の足首を縄で鼎に縛りつけられていたが、手は拘束されておら…
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アレクサンドロス戦記(十二)プロローグ⑫
神殿に静寂が戻った。 大きな揺れはそれほど長くは続かず、揺れ戻しも来なかった。 ソロンは祭壇の前にしゃがみこんでいた。イリスが連れ去られ、コリーナが殺された。それからしばらくして、アレクサンドロ…
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アレクサンドロス戦記(十一)プロローグ⑪
髭面の男がまだそこに残っていた。 男は部屋にある宝物類をひとつひとつ手に取っては値踏みしている。 その時、イリスは足音を聞いた。 ――誰かやってくる! あの男がまた戻って来るのかとイリスは怯…
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アレクサンドロス戦記(十)プロローグ⑩
「く、くるしいっ!」 イリスはもがいた。だが、縛られているので思うように身体が動かない。革紐がどんどん喉に食い込み、息が出来なくなった。 イリスは力を振り絞って、しゃがれた声を上げる。 「……まっ…
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アレクサンドロス戦記(九)プロローグ⑨
神殿の地下の至聖所では、イリスが三本の長い脚を持つ鼎の上に縛りつけられていた。 その周りをアレクサンドロスとペルディッカス、そして数人の兵士達が取り囲む。 神託の言葉を記録するためにフローフテス…
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アレクサンドロス戦記(八)プロローグ⑧
ソロンとイリスはなかなか結論が出せないでいた。ソロンはこの神託所の運営を司る者ではあったが、これまで綿々と護り続けられてきた掟をきっぱりと打ち破って、アレクサンドロスに従うことに躊躇していた。まして…
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アレクサンドロス戦記(七)プロローグ⑦
若い男が現れた。 「なんとも小賢しいことを言うではないか。手続きを踏んでも、踏まなくても結果は同じであろうが?」 ソロンは一瞬、男が何を言っているのか分からなかった。 「どういう意味です?」 「ペ…
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