小説
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アレクサンドロス戦記(三二)第一章⑱
アリストテレスがお茶の準備をしている間、ソロンは机の上のナマズの解剖図を眺めていた。魚の腹が開かれて、引き出された贓物が細密に描かれ、その上に矢印を描いて、各部位の名前が書き込まれていた。ソロンは今…
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アレクサンドロス戦記(三一)第一章⑰
壁に大きな地図が掲げてある。その前で、アリストテレスが立ち止まった。 「ソロン殿、これが世界です。この中央に我々が立っているギリシャの大地がある。東には広大なペルシア帝国。北は蛮族が暮らす未開の土地…
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アレクサンドロス戦記(三十)第一章⑯
(五)ソロン (アテナイ BC三三四年春) アテナイの南門を抜けて東に進み、イリッソス川と出会う手前にその建物はあった。この辺り土地の名をとって「リュケイオン」と呼ばれている学園である。 ――緑豊…
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アレクサンドロス戦記(二九)第一章⑮
その日からニコは外出するのをやめた。人目につくのを怖れたのだ。ニコは奴隷になってしまった姉のことを思った。 ――どんなに酷い仕打ちを受けているのだろう きっと腕だけではなく、身体中にあのような痣…
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第二話 夜汽車⑥
六 四時になった。函館まであと二時間半だ。 菅原さんの激しい責めのせいで、私は疲れ切っていた。思うように身体が動かない。 山田さんが上がってきて、「ちょっと下まで降りてくれるか」といった。 降…
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アレクサンドロス戦記(二八)第一章⑭
少女はアゴラから離れて、人通りの少ない路地に入っていく。建物の陰の中に入ると立ち止まり、後ろを振り向いた。 「ニコ……よかった。生きていてよかった」 ニコは姉の腕の中に飛び込み、二人はしっかりと抱…
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アレクサンドロス戦記(二七)第一章⑬
(四) ニコ (アンフィポリス BC三三四年春) 「蛸はいらんかえ」 「おい、兄さん、おいしいウナギはどうだい?」 「炭はいらねえか。安くしとくぜ」 アゴラに軒を並べた露天商が声を張り上げて客引きを…
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アレクサンドロス戦記(二六)第一章⑫
「戦争はなかった。でも、町の人が叔母さんを襲ったんだ……」 「襲う? どうしてだ?」 ネアルコスは意外だった。アテナイの人々がニコの叔母の家を襲撃したという。 「町中のテーバイ人を捕まえてマケドニア…
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アレクサンドロス戦記(二五)第一章⑪
「おい、余り手荒なまねはするな」 ネアルコスが男を制した。 「ちょっと、私が話をしてみよう」 ネアルコスはそう言うと少年の側に立った。 「痛いか?」 「こんなもの……それより、はやく自由にしてくれ…
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第二話 夜汽車⑤
五 井上さんに抱かれていた時に、車掌さんが見回りに来た。 廊下を歩く足音が聞こえてくる。井上さんは私の口をしっかり手で塞いだ。 やっぱり車掌さんを気にしているんだ、と思ったら、彼は逆に激しく腰…
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